願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」。西行(サイギョウ;源平の時代の僧で歌人)の和歌です。「きさらぎの望月」は、新暦では3月29日、明日です。

西行は自分の死ぬ時期を予告しておいて、「予定日」に死んでいったそうです。「きさらぎの望月」は、西行にとって忘れることのできない日でした。若いころの恋の思い出です。俗世の心を捨てた僧として表に出してはいえないことでした。

その思い出は、「きさらぎの望月」、満開の桜の下でのことでした。西行が出家する原因になった出来事でもあります。かれは生涯、この思い出を胸に秘め、そして大切にしたのですね。

満開の便りが続々。ひとは変わりますが、花のほうは年年歳歳、おなじように満開を迎えます。

京都新聞:桜満開、京都で「最速」 記録残る1953年以降、平年より10日早く