大病院の患者避難、実施したのに何もなかった、となると判断したひとは立つ瀬がありません。たとえば、

9月初めの台風10号のとき。鹿児島病院には高潮の危険が迫っていました。患者避難は検討しなかったようです。高潮は起きませんでした。

うまくいったように見えますが、一歩間違っていたらどうでしょう? このとき、鹿児島港の潮位は、既往最大まであと50 cmに迫っていました。もし、台風の勢力が衰えず、進路が鹿児島市に近かったら、病院は高潮による浸水で孤立していたかもしれません。

大病院の場合、垂直避難という手があります。上層階に避難することです。電源が確保できれば、この手があります。しかし、自家発も含めて全電源停止に陥ったとしたら、…。93年の豪雨時、鹿児島市内で、地下に設置した自家発が浸水してダメになった病院がありました。

2012年のハリケーン・サンディが引き起こした高潮で、ニューヨーク市マンハッタンのベルビュー病院が浸水し、全電源喪失に陥りました。25階建てのこの大病院の患者避難には丸2日を要しました。エレベーターを使える間に避難しておれば、はるかに早く・安全にできたはずです。

医療機関甘い水害対策 西日本豪雨で95施設被災