「津波は防潮堤を越えてきた」。10年前、岩手県宮古市田老地区の住民はこう語りました。そこには高さ10mの巨大防潮堤がありました。まさか、
津波がそれを越えてくるとは! その後、そこにはもっと高い防潮堤ができています。
震災後発表された「復興構想会議提言」は、「この規模の津波を防波堤・防潮堤を中心とする最前線のみで防御することは、もはやできないことが明らかとなった」、と述べています。高さ10mの防潮堤をこの国の海岸線に張り巡らすことはできません。
自然を土木工事によって制圧するのが無理なことは、いまではみんな理解しています。それは物理的に不可能なだけでなく、財政的にも不可能です。津波によるものを含めて、被害には防ぐことのできないものと防げるものがあります。防げる被害を防ぐ努力は減災と呼ばれています。
防潮堤を高くすれば防げる災害の割合は増えるでしょう。しかし、もうひとつ大事なことがあります。備えと、そのときの対応行動です。まちがったことをしない、というのもあります。災害の多くの部分は人災です。減災のためにできることがあります。