人間の判断には間違いがつきものです。裁判官の判決や医師の診断も、わたしたちが想像するほど合理的なものではないようです。間違いをなくすことはできませんが、減らす方法はあります。

行動経済学者のカーネマン（ノーベル経済学受賞者）らは、判断の間違いを減らす努力を「意思決定の健康法」と呼んで、その方法を紹介しています。衆知を集めることやガイドラインを用意することに始まるその方法には、セイラーのいうナッジもはいっています。

間違いが致命的な結果につながるような判断があります。意思決定者にプレッシャーをかけてもよい結果にはなりません。方法論を無視して意思決定者の能力と努力を信頼するだけでは危険です。信頼に自分の命を預けるのはコワイことです。

意思決定の健康法には、もうひとつ大事な点があります。それは、緊急時にやることと平時にやっておくこととを区別することです。カーネマンもセイラーも、平時の熟慮によって選択肢を用意しておき、緊急時にはそれを機械的に適用することを勧めています。