避難計画イメージ

「私の防災」のために

悪気はなくても罪深いウソ
「ハザードマップを見て危険だと思ったら直ぐに安全な場所に避難してください」。2020年7月の九州豪雨のさなか、テレビのコメンテーターがこんな呼びかけをしていました。この呼びかけは適切でしょうか? ハザードマップを見て危険を判断するというのは、具体的には何を意味しているのでしょう? 一刻を争うときにそんな考察をしていられるものでしょうか? そもそも、だれもがハザードマップを探し出せるでしょうか? 
防災に関していわれていることの多くが不適切です。言うひとに悪気はないわけですが、真に受けると被害につながりかねない罪深いウソがあります。こういうことがおこる理由は、災害に関係する専門領域が、あまりに細分化していることです。細分化した災害科学を束ねても防災にはなりません。

真実への鍵
防災に関するウソで、もうひとつ注意すべきことがあります。それは緊急時と平時という防災の2つの時間モード(このページの図:防災の時間モード)を区別せずに語られることがおおいことです。ハザードマップを見て危険を判断するなど多くのことは平時にやっておくべきことで、危険が切迫している状況でできることではありません。
防災の真実への鍵は視点を定めることにあります。誰の防災か、ということです。あなたの防災、あるいはあなたが責任を負う施設の防災は、防災一般ではありませんし、地域の防災とも同じではありません。
 
わたしの防災
わたしは気象予報士なので、大きな災害が起こると、「あんなの予想できないんですか?」と聞かれることがあります。「自分も一度聞いてみたかった」。でも、何を予想してほしいのか、言えますか? それが予想できたらなにができるのか考えたことはありますか? 緊急時に自分が必要とする情報が何で、それによってどんな行動をとるのか、これを知っておかなくてはなりません。病気でいえば、これは薬にあたります。そして、あなたが必要とする情報は、実はすでにあるのです。
お察しのように、薬の前に診断があります。医師は、患者を診断して適切な薬を処方しています。あなたの防災は、あなたが、あなた自身のリスクを知ることから始まります。熊本県水俣市のある地区で住民15名が犠牲になる災害がありました。住民は、過去にも同様の災害を経験していて、このときにも、土砂災害を予期して行動していました。それがなかったら、被害はもっと大きくなっていたはずなのです(Blogのページ:避けられた被害と犠牲2)。
 
防災ホームドクター
「あなたの防災」のためにやるべきことが見えてきましたか? でも、あなたの防災はまだ緒についたばかりです。真実に至る途は迷路だからです。迷路クイズを2つ用意しましたので挑戦してみてください。迷ってもご心配なく。そこから先は、防災ホームドクターであるわたしたちアルドセイフティがご案内します。

迷路クイズ1 災害の種類

あなたが責任を負う施設(病院、老人福祉施設、学校など)が、市役所から「避難確保計画」の提出を求められていたとします。この要請は改正水防法および土砂災害防止法に基づくもので、提出は義務です。もし、まだでしたら、早く作成して提出してください。あなたの施設が、土砂災害についての「避難確保計画」だけを提出するように要請されたとします。水害については安全だといえるでしょうか? また、同じ市内の別の施設が提出を求められているのに、あなたの施設が提出を求められなかったとします。あなたの施設は土砂災害についても水害についても安全だといえるでしょうか?

迷路クイズ2 ハザードマップ

「ハザードマップ」を見たことがありますか? 「ある」という方に対するクイズです。次の質問に、あなたは何番まで答えられるでしょう?

1.それは何のハザードマップでしたか?
2.(それが浸水のハザードマップだったとして)その浸水は何によるものでしたか?
3.(それが河川による浸水だったとして)河川の名前は何でしたか?
4.(同)その浸水想定は、計画降水によるものでしたか、それとも最大降水によるものでしたか?